副交感神経が優位のリラックス状態が二重丸

昔からよく、食べてすぐに横になって寝ると「牛になる」とか、「行儀が悪い」といわれてきました。ところが、「たけしの家庭の医学」(テレビ朝日系列)という番組では、大変興味深い内容が紹介されていました。それが、「昼食後の昼寝は健康長寿の秘訣だ」ということです。

その番組では、107歳になる、あるおばあさんを紹介していました。普通、年を取ると腸内の代謝が低下するので善玉菌が育ちにくくなり、腸内環境が悪化しがちです。それなのにこのおばあさんは驚くほど若々しい腸内環境を維持していました。

このかたは、昼食後の1時間の昼寝が日課だというのです。食後の昼寝は、健康にいいのでしょうか。消化器専門医の私から見ると、非常にいいことと考えられます。まず、最初の理由は、血液の働きを考えた場合です。食事をしたあと、血液は消化吸収の働きをサポートするために、胃腸に集まります。

ところが、食べてすぐに運動や仕事などの活動を始めると、手足の筋肉や脳に血液が集まり、胃腸に血液がいかなくなってしまうのです。すると、消化に時間がかかり、消化不良を招きます。

この点から、「食休み」は、とても大切なことといえるのです。次に、昼寝をすることが、腸内環境をよくすると考えられるからです。私たちの内臓は、意志とは関係なしに働く自律神経が支配しています。自律神経は、交感神経と副交感神経が、アクセルとブレーキのように括抗して働いています。そもそも腸は、副交感神経が優位になると動きだし、逆に交感神経が優位になると動きを止めます。

つまり、昼寝は完全に全身リラックス状態なので、副交感神経が優位になり、腸の動きがよくなるわけです。

ぬかみそ同様に毎日こねることが大事

それでは、腸が動くとは、どういうことでしょう。腸が動くとは、ぜん動運動が起こっている状態です。ぜん動運動は、腹の内容物を肛門に向かって押し出す動きです。しかし、それとかくはんとともに、腹の内容物を撹拌する動きでもあります。この撹拝が非常に重要です。

腸の中には、100兆個といわれるほど、多くの腸内細菌が棲息しています。腸内細菌は、人が消化できない栄養分を分解して吸収できるようにしたり、たんぱく質やビタミンなどの栄養素の合成にかかわったり、私たちの体に不可欠な働きをしているのです。

ちなみに、腸内細菌をすべて集めると1kgにもなり、排出される便の固形成分の3分の1は腸内細菌の死骸といわれています。

便として出ていく量も多いので、健康を保つためには、新たに腸内細菌をふやしていかないといけません。その腸内細菌は、食べ物として摂取した栄養物と細菌がよく混ざらないと、発酵が進まず、増殖できません。

ぬかみそと同じ原理です。そこで、リラックスをしてぜん動運動を起こし、栄養物と細菌がよく撹拝されるようにすることが必要なのです。これにより、腸内で発酵が進み、腸内細菌が活性化します。こうした観点から、お昼を食べたあとに昼寝をすると、腸内環境がよくなり、健康増進に役立つのです。

食後の昼寝は、腸内環境を改善するための、ゴールデンタイムといってもいいでしょう。ただし、食後に胸やけがある人は、食後の昼寝は注意してください。胸やけを起こす人は、胃酸が食道に逆流している可能性があります。

食後、胃酸が活発に出ているときに横になると、逆流して食道にくる危険が高まるからです。胸やけを起こす人は、食後に横にならず、座ったまましばらく安静にする時間を確保しましょう。

ところで、107歳のおばあさんの食生活は、いろいろと多彩な食品を食べるというものでした。そのため、栄養バランスもよく、それもあって腸内環境の若さが保たれていたのでしょう。ちなみに、腸内環境を良好に保つうえで、便秘や下痢は大敵です。便秘が続くというのは、腸のぜん動運動が不活発な証拠ですし、下痢をすると、発酵して生成された腸内細菌が、働く問もなくすぐに排出されてしまうからです。

便秘にならないためには、とにかく朝起きたら、水なり食べ物なりを胃に入れる習慣をつけるといいでしょう。すると、胃にものが入った刺激が大腸に伝わり、大腸が動きだします。これを胃結腸反射といいます。そして、S状結腸にたまっていた便が直腸に落ちることで、便意を感じるのです。いろいろなものを食べて栄養バランスをよくし、食後はゆつたりと食休みをして腸内環境を整えることが、健康長寿につながるでしょう。

どうしても自力で排泄できない頑固な便秘持ちの人は特定保健用食品のイサゴールがおすすめです。水溶性食物繊維と不溶性食物繊維のバランスがよく自然な排便が可能です。ゆるくなりすぎた場合は量を減らすだけで調整可能です。