これまでとは異なる日本人の腸

この30年ほど、日本人の腸が、かなりのストレスにさらされています。それにより腸に大きな異変が起きているのがわかります。最も象徴的なことに大腸ガンの急増です。それまで日本人には、珍しいガンでしたが大腸ガンが急増しているのです。
統計上では、1980年頃から大腸ガンの羅患率が高くなっています。それまで日本人に多いがんとされていた胃ガンの死亡率は逆に減少傾向にあります。
大腸ガンによる死亡数は、

  • 1955年…男性2079人/女性2160人
  • 2006年…男性22380人/女性18653人

に増えています。この短期間で10倍に増加しているのです。現在では、女性がかかるガンでは、03年から死因のトップです。男性も3位と上位です。
以前から大腸ガンががトップになるだろうという専門家の予想もありましたが、遙かに速いスピードで驚いています。
大腸ガンは、働き盛りの世代に多く、40代を過ぎると急増するのも特徴です。大腸検診による大腸ガンの発見率も35~39歳の世代と40~44歳の世代とで2倍以上異なります。
若い20代の早期の大腸ガンが見つかるケースもあります。

潰瘍性大腸炎とクローン病の急増

国の難病指定となっている潰瘍性大腸炎とクローン病などの炎症性腸疾患と呼ばれる病気があります。
いずれも1980年以前の日本には少ない病気でしたが、この疾患もここ30年あまりで激増しています。炎症性腸疾患とは腸の粘膜びらんや潰瘍などの炎症が起こり、下痢や下血をの症状を繰り返す病気の総称です。
炎症性腸疾患の代表的な病気が潰瘍性大腸炎やクローン病です。現在は、決定的な治療がなく症状を抑えることしかできません。
症状が症状で仕事に支障をきたすことも多くQOLの維持に困難となります。
このふたつの疾患は、若い患者に多くクローン病などは、10~20代の若い世代に集中しています。また患者の数は、年々増えています。

明らかな原因が見つからないものの、慢性的に下痢や腹痛を起こすものに「過敏性腸症候群」がありますが、働き盛りの男性を中心にこの症状で悩む方も目立ってきました。

アレルギー、花粉症も急増

大腸ガン、炎症性腸疾患とともに花粉症や食物アレルギー、ぜんそくといった免疫疾患系も増加しています。アレルギー症状を経験している人は、全体の半数にもなり、驚くべき数値となっています。なかでも若年性のアレルギー疾患が問題となっています。

医学的には、免疫疾患と腸との直接的んは因果関係はまだはっきりしていませんが、免疫をつかさどる全身のリンパ球の6割以上が腸管に集中していることからも無視できません。
腸が人体最大の免疫器官であることを考えると、免疫系の疾患の増加と腸の疾患の増加が無関係とはいえないでしょう。
腸内では、その免疫機能の働きを左右するのが、腸内細菌群です。腸内細菌には、乳酸菌、ビフィズス菌などの善玉菌、ウェルシュ菌などの悪玉菌、そのどちらでもない日和菌の3種類がありますが、これが一定のバランスを保つことで腸内免疫機能を果たしているのです。
免疫機能が衰えると、がん、インフルエンザ、などの感染症にかかりやすくなります。

なぜ日本人の腸は変化してしまったのだろう

日本人の腸は、大きなストレスにさらされており、その苦痛に悩む人は増える一方です。どうしたこのように腸にストレスがかかるようになってしまったのでしょうか?
主な原因は、4つです。

  • 食事
  • ストレス
  • 運動不足
  • 体内リズムの乱れ

です。まずは食事についてですが、戦後、日本の食生活、食事事情は大きく変わりました。よく欧米化によりカロリー過多になっているといいますが、日本人は、それほどカロリーを過剰に摂取していません。日本がまだ戦後の復興で貧しかった頃からそれほどカロリーは変化がないのです。意外かもしれませんが、これは調査済みです。
日本人の食生活で大きく変わったのは、「米をたべなくなった」ことです。
また、腸の変化とも非常に関係の深い、「食物繊維」を摂らなくなったことです。これが便秘などの原因の主な要因です。また、食用油を摂取するようになり、リノール酸の摂取が増えています。こうした油は、お菓子や加工食品にも含まれるため必然的に摂取量が増えているのです。
一方で、日本人の寿命が延びているのは、肉や乳製品を摂るようになったことが大きく影響しているといいます。
脂質が少ない、昔ながらの粗食では血管がもろくなり、脳卒中などが起こしやすくなります。
次にストレスですが、ストレスには、身体的ストレスと精神的ストレスの2種類あります。貧しい時代は、空腹や寒さなどの身体的ストレスが多かったのですが、現代では、受験、就職活動、職場での人間関係といった精神的ストレスの比重が増えました。
ストレスがあるのは、当たり前ですが、鬱病などの急増をみると、ストレスを軽視できない状況です。腸とストレスの関係は、古くから指摘されていました。
腸のぜん動運動と深いかかわりがあるのです。ぜん動運動でよく知られるのが、「胃・」結腸反射」と「直腸反射」ですが、胃に食物が入り、反射的に結腸が動き始めるのが、「胃・結腸反射」です。その後に起こる便意が「直腸反射」です。ストレスがかかると、腸の動きが悪くなったり、逆に過剰になる場合もあります。
次に運動ですが、社会で働いている人の多くが運動不足です。その証拠に男性の肥満は20代以降のあらゆる年代で急増しています。
女性の場合には、過剰なダイエットで低体重になっている例が多くみられます。
これは、運動により痩せているのではありません。
運動は、腸の働きを活発にし、消化・吸収を高める働きをサポートします。
食後にウォーキングなどをすると便意を催すのはこのためです。
現代人は、食の偏りに加え、パソコンの前で座っている時間が増えています。このことが腸の病気を増やしている原因のひとつとして考えられています

最後に体内リズムの乱れですが、人間の体は、それぞれの部位、機能ごとに1日の中でもさまざまなリズムをもっています。
気分や意欲などのメンタル機能は、早朝は抑制され、昼間に次第に上昇します。午後2~3時頃にはピークになります。この後、夕方にかけては、意欲は低下しはじめ、就寝時刻には1日の中で最低値を示します。
これと同じように腸にも固有のリズムがあります。朝は、腸のぜん動運動が最も活発で、日中にも1~2回活発になります。朝よりは小さいぜん動運動になります。
このぜん動運動は、胃に食物が入ることで連動するので朝食の摂取が非常に重要です。
現代人は、朝食を食べない人が増え、腸のリズムを乱してしまっています。
こうした体内リズムの中心的役割を果たしているのが、体内時計です。暗くなると眠くなり、朝になると目覚めるのもこの体内時計によるものです。
体内時計は、体温、メラトニン、ホルモン、セロトニン、ノルアドレナリンなどのホルモンのリズムと関連しながら作用しています。
現代人は、不規則な生活やストレスからこの体内時計に狂いが生じている人が多いく、排便が障害されてしまっている人が多くみられます。体内時計を中心とした体内リズムの乱れもまた腸の病気にとってリスクとなるのです。